鮎川哲也

今,ちょっと読書モードに入っているので,これを機に(何を今更という感じだが)鮎川哲也を読破してみようと思い立った。私は鮎川の良い読者ではない。長編は『黒いトランク』『りら荘事件』『憎悪の化石』『黒い白鳥』『人それを情死と呼ぶ』『朱の絶筆』しか読んでいない。短編もまともに読んだのは三番館シリーズくらい。このうち楽しめたのは『人それを〜』と三番館シリーズ(これは本邦三大短編集の一つと信じる)だけなのだから,ろくな読者ではない。なぜ駄目かというと,アリバイ崩しが好きではないのと,時刻表がてんで駄目だからだ。土屋隆夫の方が好みだ。しかし,本格派の驍将とまで称される人の作品を読まず嫌いするのは沽券に係わるので,とりあえず短編集2冊を買った。北村薫編集による創元推理文庫『五つの時計』と『下り“はつかり”』である。何故か三番館シリーズは楽しめた私なので,とりあえず短編から攻める。日常の謎を好まない私ではあるが,北村セレクトなら信用できるのだ。長編については『鮎川哲也読本』を参考にしようと思ったが,加納朋子のエッセイが面白かった(何の参考にもならなかったが)くらいで,後はイマイチだった。2冊の短編集を読んで,まだ読もうという気が残っていたら,『ペトロフ事件』『死のある風景』あたりに取り組んでみたい。