どうどうめぐりのめくらまし


芦辺拓『綺想宮殺人事件』読了。なんでも日本探偵小説三大奇書黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』(私は,何故この3冊が「奇書」だの『匣の中の失楽』を加えて「黒い水脈」だのと括られているのか,正直よく分からない)に連なる作品と謳われ,今年の各種ミステリベスト10にも入っている(本ミス:4位 文春:8位 このミス:10位……手堅く地味だなぁ,芦辺らしいなぁ)。
◆“最後の探偵小説,あるいは探偵小説の最期”なんて気負ってるけど,森江春策役に中村梅雀起用を許したこと(若村麻由美岩崎ひろみは好きだから,イメージと違っても許す)とあわせて,「森江シリーズの最期」というべきではないか。私が,もともと芦辺作品の良い読者ではないという点を差し引いても,これは失敗作だろう。ぺダンチックな雰囲気を出そうと思ったら,長ったらしいルビを振った単語だけでなく,文章の構成要素すべてを大層にしてリーダビリティを100%無視しなけりゃ雰囲気には浸れないです。それと,誠に忌々しいことに,関西弁という奴は,ぺダンチックな雰囲気に全然合わないのだ……この決定的な事実からしても,森江シリーズでやるべき趣向ではなかったですね。