りら荘事件

光文社文庫の『りら荘事件 増補版』のうち、「りら荘事件」を読んだ(併録の「呪縛再現」は、まだ)。ずいぶん昔に、講談社文庫版を読んでいるので、新鮮な驚きというのはなかったけれど(あ、でも、最後の殺人は忘れてた)、面白くは読めた。しかし、気になったのは、やっぱり言葉狩りをしてるんじゃないかということだ。最近は、差別的な意図をもって書かれたものじゃないし、書かれた時代背景もあるし、作者は死んじゃってるんで、敢えて元のままにしてありますよ、という注釈をつけて刊行するのが時代の流れだと思ってたんだが、光文社は違うようだ。というのも、この増補版は、「作者が朱を入れた最終版である講談社文庫版をもとに初刊本の光風社版、春陽堂文庫版を参照して校訂した」らしいのだが、「色盲」という言葉が「色が識別できない」と書き換えられているのだ。1992年時点で使っていた「色盲」を、1958年の初刊本や1961年の春陽堂文庫版で使っていなかったとは到底思えない。さすがに講談社文庫と光文社文庫テッテ的に比較して読む気はしないが、改稿版の剣持警部を旧稿版の原田警部に戻して、ツマラン言葉狩りをしただけではないかという気がする。更に、星影竜三が、表紙では龍三、本文では竜三と表記されていたり、あんまりキッチリした仕事をしてないなぁと思わせる。どうも光文社という出版社は信用できない。

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