【テレビ感想】ルパン三世 血の刻印〜永遠のmermaid〜

春に「新シリーズ,秋に放送開始!」とか言いながら,蓋を開けてみたら,いつもの新作スペシャルだったという酷い話。この間,「本当は新シリーズやりたかったけど,ぽしゃったんじゃないか」とか言われていたけれど,先日,録画を生放送みたいにして放送し,「演出だった」と開き直った日テレのことだから,最初から詐欺だったんじゃないかと思う。
で,注目の新声優は,驚くほどに違和感がない。でも,『風魔一族の陰謀』には負けるかな。あのキャスト総入れ替えは,かなり評判が悪いようだが,あの時点で,あれ以上のキャスティングはなかったと思うぞ。それぞれのキャラのイメージを守った,いいキャスティングだったと思う(ルパンが軽すぎる気もするが,演技ができるだけクリカンよりマシだ)。今回の新キャストは,ほとんど喋らない五ヱ門はともかく(しかし,かつての殺し屋ナンバー2も弱くなったもんだなぁ),不二子なんかほとんど増山だ。言われなきゃ気づかない人もいるんじゃないかと思うほどに増山だ。もっとも,強いんだか弱いんだか可愛いんだか色っぽいんだか分からない二階堂ボイス好みの私としては複雑なのだが,若い不二子というのが,これほど安心感をもたらすとは。問題は,山ちゃんの銭形だ。いかに七色の声を持つ男といえど,やっぱり違和感はある。世間では「ルパンを山ちゃんに!」という声が圧倒的だったと思うが(それをやると『カウボーイビバップ』になっちまうじゃねぇかという声もあったが),ここで銭形役というのは,単に声が似てるだけの物真似野郎より,しっかりと演技ができる人,今後のルパンを引っ張っていける人,という観点からの起用だと信じたい。だから,山ちゃんは,もっと男前の渋い声で演じてもいいと思うし,その声で脚本家を覚醒させて,銭形を「バカ銭」から「切れ者警部」に戻してほしいと期待する。でなきゃ,もったいないぜ。
ストーリーは,マモーとカリオストロを混ぜて,もののけ姫バビロンの黄金伝説をぶち込み,そいでもってスケールダウンさせたもので,まぁ,こんなもんですかねぇ,という感じ。敵がショボすぎるわな。すごい敵なんだ!と思わせるためには,あのババァを,もっとすごい奴だと演出しておかなきゃならないのに,全然ダメ。裏社会を牛耳ってる奴が,自分で貧乏くさい孤児院に借金取り立てに行ったりするか?それに,せっかく野沢雅子を連れてきて,あれだけで終わらせるなんて,頭がおかしいんじゃないか?脚本と演出のバランスが全然取れてない。
ジブリ臭いとはいえ,割とマトモなキャラクターデザインと作画(丁寧すぎるのか,アクションシーンにキレが感じられなかったのはマイナス),ところどころに挿入されるファーストシリーズへのオマージュと思われるカット,泥棒稼業への自己言及,平然と発砲するルパン,そして近年稀に見る流血量など,それなりに注目させるところはあったものの,やっぱりガキを出さなきゃ成立しないのかと思うとゲンナリする。ガキが出ると緊張感はなくなるし,ルパンは年取ったいいオジサマになっちゃうし(なんで,みんな,こんなにカリオストロを引きずるんだ?),メリットなんて何もないだろうに。今更「魔術師と呼ばれた男」とか「雨の午後はヤバイゼ」をやれとは言わんが,それなりにオトナのアクションドラマってものを見せてもらいたい。今回だって,ガキ抜きで構成できただろうに。せっかく声優を若返らせたんだから,ルパン達のキャラも若返らせてほしい。
しかし,これで,今後しばらく安定路線は確定か。レギュラー,スタッフ総入れ替えなんて,やっぱり夢のまた夢だったなぁ。そろそろ新しい作曲家による新しいテーマ曲を聞いてみたいんだがなぁ。