【ブログ】『シンフォニック・ロスト』を読んだ

作者は千澤のり子。私は,この千澤という人を知っている。「知っている」と言ってもネット上だけで,実際には喋ったことも会ったこともない。尻,いや知り合ったのが,どこのサイトでだったか,何の話をしたのかとかは全然覚えていないが,かれこれ10年にはなる,古いお付き合いである。当時は,まだ作家ではなく,一ミステリファンだったのだが,今では「先生」なのだからビックリだ。私の方が,ミステリファンとして真っ当な道を歩んできたと思ってたのになぁ……。「作家と知り合った」のではなく,「知ってる人が作家になった」というのは,すごいことだ。で,知ってる人の書いた本というのは,読みにくいものである。強烈な嫉妬が絡むからだ。
物書き……この素晴らしい響き。憧れの職業,物書き。ちなみに,作家と知り合った……いや,メールのやり取りを3往復以上させていただいたことがあるというだけなのだが,そういう関係にある方として貫井徳郎氏と千街晶之氏(評論家だって作家でしょ)のお二人がいらっしゃる。お二人とも,とにかくすごいのである。辛口の私が言うんだから,間違いなくすごいのである。この人たちの書いたものなら,何を読んでもハズレはない。絶対。ホントに。もう,どんな脳みそをしてるのか,猿だったら食ってみたいくらいである。でも,そんなに(あくまで「そんなに」ですよ)嫉妬は感じない。メールのやり取りをさせていただいた時点で既に作家だった人たちだからだ。でも,貫井氏は「自分は大した作家ではない」とかのたまうんですよ。そりゃ日本人の美徳,謙遜でしょうけど,耳掻きを鼻の穴に突っ込んで,脳まで貫いたろかとか必殺的なことをちらっと思ったりもしますね。大した作家のくせに。けっ。
それはともかく,知り合ってから作家になった千澤さんが,私とネットでミステリの話(多分)なんかしつつ,裏でものすごい努力をした(そして今もしている)のだろうな,ということは頭では分かっているが,人は理性だけで生きているわけではないのだ。というわけで,普通に作品を楽しめず,粗探し的な読み方をしてしまう(一方で,もし会うことがあったら,サインしてもらおかな。千街さんのサインも貰ってきてもらおかな,とか思ってる自分がいたりする)。
私には物書きになった知り合いが複数いて,中には,どんなに贔屓目に見ても,て言うか贔屓する気すら起きず,よくもまぁ,こんなもんを出版して恥ずかしくないなぁ,金を取る気になるなぁ,関わった奴ら全員日本語読めないのかなぁ,俺が電話の内容をメモした紙の方が価値あるぞという酷い本を出した人もいて,そんなのは無視していれば済むのでいいのだが(そう言えば2冊目を出したという話は聞かんなぁ),この作品は,それなりにちゃんとしてるから性質が悪い。
「それなりに」とは失礼な言い草だが,知り合いとはいえ,これで金もらってる人なんだから正直に言うと,決して年間ベスト20に入るようなレベルではない。ネタバレになるので詳しくは書けないが,やろうとしていることは本を開いて2,3ページで察しがついたし,犯人も土曜ワイド劇場並みに簡単に分かった(ただし,作者の狙いは,ここではない)。そして,ここが肝心なところだが,残念なことに私は驚くことができなかったのだ(意図等を察していても驚くことは可能なのだが)。というわけで,私の基準からすれば,まぁ普通なのだけれど,これも,嫉妬の焔に燃えた目で読んだ感想だから,100%公平公正な評価ですと言い切る自信がない。我ながら情けなく恥ずかしい。ただ,間違いなく言えるのは,表紙に写ってるお姉ちゃんは可愛い,ということである。誰や,この子(作者ではない,念の為)。http://amzn.to/pdfHDS