悪魔ここに誕生す

x001it2009-03-08

◆さっき「黒蘭姫」を読み終えた。図書館で横溝を借りるときには可能な限り春陽文庫版にしている(角川版は差別語狩りされてるし,そもそも絶版が多すぎる)のだが,よく考えたら乱歩文庫もやってるんだなぁ,春陽堂書店は。偉い本屋だ。それはさておき,横溝短編はおどろおどろでなく,意外や都会的な事件が多いのだ。殺人動機もビジネスライクなものが多い。そのくせ死体は首チョンパされてたり,探偵役が和服の金田一なんだからバランスを欠いてますな。というわけで,なるほど映像化作品が比較的少ないのだなと納得。
金田一映画と言えば,やっぱり市川崑石坂浩二の『犬神家の一族』(当然リメイク版じゃないぞ)『悪魔の手毬唄』,小川眞由美と山崎努の超ド級ホラー『八つ墓村』(テレビの『横溝正史シリーズ』版も隠れた傑作),中尾彬の『本陣殺人事件』(ATGには『不連続殺人事件』って傑作もありますな)……あたりまでは誰でも薦めるんだが,何故,西田敏行の『悪魔が来りて笛を吹く』に触れる人が少ないんだ?触れてても貶す奴ばっかりじゃねぇか。金田一に貫禄がありすぎるってか?しかし,この映画はすごいぞ。椿子爵に仲谷昇,あき(火偏に禾と書く)子に鰐淵晴子ってキャストだけでお腹いっぱい(ちなみにテレビの『横溝正史シリーズ』版では,利彦が長門裕之,あき子は草笛光子という悪趣味炸裂配役……正直反吐が出るほど醜い映像(ある意味褒めてます)見たくない……)なのに,なんと金田一パトロン風間俊六まで登場,それを梅宮辰夫が演じるだけでなく,その女房役に浜木綿子だってんだから驚いたねぇ。山本邦山作曲のメインテーマ「黄金のフルート」は大名曲(名盤「悪魔の調べ〜ミステリー映画の世界〜」に収録されてないのは製作側の不見識である),タイトルバックは『翔べ!必殺うらごろし』を髣髴とさせる映像,脚本は必殺シリーズでもお馴染み,情念の作家,野上龍雄。犯人を原作とは少しだけ変えることで,どろどろ濃度が120%アップ!「何故,私は死ななくてはならないの?」「……あなたが私を産んだから」という対峙シーンは強烈。これがビデオ絶版状態なのは日本文化の恥である。おまけに最近じゃレンタル店からもビデオが駆逐され,DVDになってない本作を見つけることが非常に難しい。すぐさまDVD化すべし!